ステレオ太陽族 / サザン・オールスターズ
A面
- Hello My Love
- My Foreplay Music
- 素顔で踊らせて
- 夜風のオン・ザ・ビーチ
- 恋の女のストーリー
- 我らパープー仲間
B面
- ラッパとおじさん (Dear M.Y’s Boogie)
- Let’s Take a Chance
- ステレオ太陽族
- ムクが泣く
- 朝方ムーンライト
- Big Star Blues(ビッグ・スターの悲劇)
- 栞(しおり)のテーマ
NHKプラスでサザンの特集番組を見たのだった。
そう言えば、昨日から10年振りの4日間連続の茅ヶ崎球場ライヴが行われるタイミングか。莫大な経済効果が茅ヶ崎市に齎されることだろうが、浜のゴミも気になるところだ。まあ、そういうのも地元の商工会あたりは折込済みなのだろうが、、、。
レコード棚を探ってみると、7インチ・シングルが2枚「勝手にシンドバッド」「気分しだいで責めないで」、アルバムが3枚「ステレオ太陽族」「NUDE MAN」「人気者で行こう」が出てきた。いずれも高校生の時に買ったものと思われる。自分では、パンクスだ、ニュー・ウェイヴだとかばっかり言ってたはずだと思っていたが、普通にサザンも買ってるなんて、オレも可愛いヤツじゃないか。
という訳で、今このタイミングで、サザンの音源に真剣に向き合ってみた。
上述の音源は、全てTaguchi FB12 スピーカー・システムでも、ヘッドフォンSennheiser HD599SEでも聞き直した。針を落としたのは多分高校生の時以来なのではなかろうか。盤の状態は非常に良かった。
デビュー曲である「勝手にシンドバッド」は、改めて聞いてみるとミックスがかなり雑に感じられた。特にドラムの音作り、バランスがテキトー。だが、やはり楽曲の持つバイブスは高い。あの頃の日本の楽器のミックスは、アンサンブルとか、それに対するボーカルのボリューム感(聞こえ方)に重きが置かれてることが多い様に思っているのだが(つまりリズムが重視されていない)、にしてはベースの音は大きい。桑田佳祐のボーカルはキワモノっぽさを無理に出してる感じはある。デビュー曲だからしょうがないか。ホーンで参加しているのがスペクトラムであることは今回手にして初めて知ったことだ。スゲー。カップリングの「当たって砕けろ」は、A面とは違う個性を打ち出してはいるが、後に桑田佳祐が見せるソング・ライティングの凄みはまだ発揮していない。
2ndシングルだった「気分しだいで責めないで」も同様だ。ミックスは雑に感じるが、楽曲のパワーは凄い。桑田のボーカルもまだキワモノっぽさが前面に打ち出されていると感じた。カップリングの「茅ヶ崎に背を向けて」も、原由子のボーカルをソロで採用したパートがあるという点では、そのボーカリストとしての資質を初めて全面に打ち出した楽曲と言えるが、そこまでのインパクトはない。
所有していないが、サザンが本当にすごいと評価されたのは、3rdシングルの「いとしのエリー」からであったと思う。「ああ、こういうのもやるんだ、スゲーいい曲じゃん」という感覚が定着した楽曲だった様に思い出される。
今回聴き直したアルバムで言えば、後に代表作とされる楽曲を多く収録していることから、5枚目の「NUDE MAN」の評価が高い様に思うし、7枚目となる「人気者で行こう」においては、かなり業界的なレコーディング技術の向上が感じられたが、ここでは敢えて1981年に発表された4枚目のアルバム「ステレオ太陽族」をレビューしようと思う。超有名曲「栞のテーマ」を収録しているだけでも重要な作品なのだが、桑田さんの趣味に近い感じの曲も多く、また知名度は低いが、桑田氏のシティ・ポップス的な作曲センスが光る曲を多く含むアルバムだと思えたからだ。アナログ機材のレコーディングの暖かさも感じられた。
サザン・オールスターズの良さは、軽やかにある様に、僕には思える。
桑田佳祐は良く洋楽を知ってる人だと思う。
自分が洋楽ファンであることが第一義としてあの人の中にはあると思える。それがあの歌詞なのだろう。今日見たNHKの番組でも本人が語っていたが「歌詞なんて乗っかりゃいいと思ってた」とのことだが、それはリズム感であり、聴感上のノリであり、楽曲の総合的なバランス、ということなのか。多くの人気を獲得してからは「自分の歌詞を聞いてくれるファンがいる」ということを意識して、メッセージ性にも気を配る様になったと言っていた。
要は洋楽ファンにも受け入れられる楽曲のクォリティが、サザンの魅力を構成する重要な一部分なのだと思う。だからサザンは多くの洋楽ファンに応えるかの様に、ロックであることにはあまり固執してないのではないだろうか(もちろんロックの解釈も一級品であるのだが)。だから音楽性に富み、軽やかなのだ。
で、この「ステレオ太陽族」である。らしさ全開で、愉快痛快。押しも押されぬ日本のトップ・バンドになった自信も自覚も覚悟もアリアリの傑作だ。
シングルでも行けそうな、爽やかでいて、サザンならではの、ブリッジ的部分がジャジーに展開するA面M1。
過去作「奥歯を食いしばれ」に通じる様な雰囲気を醸すマイナー調のロック・ナンバーのA面M2、B面M2。
僕が思うところのシティ・ポップスとして素晴らしい佳曲のA面M3、M4。スタンダード・ジャズ調から気持ちいいサビへと展開していくA面M5。
後の「夏をあきらめて」や「チャコの海岸物語」に通じる様な、独自なシティ・ポップス路線の世界観を持ったB面M5。
そのまま正規な1曲として完成させて欲しいのにインタールード的な小曲となったアルバム・タイトル曲のB面M3。
これだけでもバラエティに富んでいる。
B面M4は、唯一ベースの関口の作でボーカルも彼が取った曲で、初期ビートルズというか60年代ブリティッシュ・ポップスを思わせる。
そして桑田の趣味に走っていると思われる曲。
レイ・チャールズの [Hit The Road Jack ]を連想させるスウィング・ジャズのA面M6。
偉大なジャズマンであり、多くの東映ヤクザ映画の音楽を担当し、サザンにとってはホーンのアレンジャーとして世話になった、大先輩の八木正生氏に敬意を表した英語歌詞のブギー・ナンバーB面M1。
クラプトンの様な超カッコいいブルース・ロックのB面M6。
そしてラストを締め括る絶対的な名曲B面M7「栞のテーマ」。
何度聴いても聴き飽きることはない。シングル・ヒットの収録に頼らないでもアルバムを構成出来る。サザンの底力を見せつけた1枚なのではないだろうかと思う。
という訳で、偉そうにサザン・オールスターズをレビューさせて頂いた。
かつてレゲエ・ライターだった頃には評することが出来なかった作品を、勝手に評することが出来るのが、この個人ウェブ・マガジンなのだ。何せ勝手にやってるので。
なので再三申しておりますが、御意見無用でお願いします。