Sunshine Man / Harold Alexander
- 1. Sunshine Man
- 2. Quick City
- 3. Tite Rope
- 4. Mama Soul
- 5. Aqulla
- 6. Clean Up
70年代に多くの名作を世に送り出したジャズのレーベル [Flying Dutchman] よりリリースされた、ソプラノ・サックス/フルート奏者のハロルド・アレキサンダーの1971年発表のアルバム。超絶クセツヨ曲 M4の [Mama Soul] で有名なアルバムなのだが、クセが強いだけではない。実に魂のこもったファンキーな作品である。
リリース当時、当然アナログのLPレコードで発売されているので、M1からM3までがA面、M4からM6がB面だったのだろう。A面がソプラノ・サックスで演奏しており、B面がフルート、という構成になっている。
オープニングのタイトル曲のM1は11分にも及ぶグルーヴィなジャズ・ファンク・ナンバーで、タイトな演奏にハロルドのソプラノ・サックスがメチャクチャかっこいい。思わず体が動き出す超クールな曲だ。ソプラノ・サックスがリードを取る曲にこれまで僕自身があまり馴染みが無かったのかも知れないのだが、特徴的な軽快さというか高音域で自由に動き回る感じが新鮮で、聞きながら首を振ってしまう。ずぅ〜っと聞いていたい感じだ。
M2も激烈かっこいいリフから始まり、いい感じで突き進んで行くのだが、ハロルドのソロぐらいから徐々にアヴァンギャルドな過激さが顔を覗かせ始める。でもバッキングがタイトなファンク・ビートをキープしているので、その上で自由に暴れている感じがまたいい。
M3は短めだが、バンドの全楽器が自由に動き始め、ソロを取り、その掛け合いがスリリングな1曲だ。
問題はこの方が楽器をフルートに持ち替えてからだ。
ジャズのフルートを聞いていると、たまに吹く時に演奏者の声が混じってしまうことはあるが、この方の場合はそれが混ざるどころの度合いではないのだ。フルート以上にこの人自身が歌っちゃっているのだ。
そのガナリ地声フルートが衝撃すぎるのが M4の [Mama Soul] だ。まずリフのフレーズの1拍目の音で「ワッ」って言っちゃってるから。まさに魂のファンキー・フルートだ。バックが超冷静かつタイトなファンク・ビートをキープしていて、そのコントラストの中でのフルートのソロ・パートは、最早スキャットに近い。この曲の中ではまともに吹いている場面はほとんどない。またその声質が高めで、何とも言えない味である。ツバがスゴそうだ。フルートにもマイクにもその周辺にも。
打って変わってメロウな感じのM5では全編真面目に吹いている。真面目にやればまたこれが素晴らしい。声を混ぜない演奏の音色も非常にいいのだ。
ラストを飾るM6はその両方を行く感じ。普通にカッコよくグルーヴィなジャズで始まるのだが、ソロでは再び声入りフルートが全開になる。だが行き過ぎない感じのところでエレピのソロと交代。ひと安心。いや、ひと安心というかバランスが保たれる。しかしその後、今度はバックが全面ブレイクしてのガナりフルートのソロ。だが、ソロ明けでテンポ・ダウンしてエンディングに向かう辺りは、本作を総括している様で実にかっこいい終わり方だ。
本作をリリースしているレーベル [Flying Dutchman] のロゴ・マークが好きだ。T-シャルが欲しい。名古屋に移住する前はよく版から自分で作っていたのだが、あの頃に作っておけばよかったな。もちろん売りものではなく、自分用にだが。
イギリスの伝承に [Flying Dutchman] (さまよえるオランダ人)という幽霊船の話があるみたいだが、それが由来なのか僕は知らない。僕にとってはロニー・リストン・スミスやギル・スコット・ヘロン、ガトー・バルビエリといった70年代のジャズ・ファンク、初期フュージョンを教えてもらったレーベルなのである。
サンシャイン・マン[CD] [完全限定生産] / ハロルド・アレキサンダー 価格:1100円 |