Episode 3 : 最終話 また少し太って帰ります。
居酒屋「ぼちぼち」を後にして、2分後ぐらいに家に着いた。
もう既に帰って来ていた姪の正枝に「明日ね」と声だけかけて寝落ちした。
翌朝、若干二日酔い気味である。
今日の昼は姉と姪と3人でランチの予定だったので、朝食は抜いて体調を整えるためにゴロゴロしていた。
ランチは姉の提案で「MAMA PAPA」に行くことになった。美味かったと僕が散々言ったからだ。別に異存はない。何なら自主的にもう一回行っても良かった店だ。
僕と姉はネパール・カレーのBセット、正枝はAセットを頼んでいた。2人の口から特に「美味しいね」という感嘆の言葉は聞こえなかった。そうかな〜。オレだったら「美味んまっ!」ぐらいの心の声が漏れてしまうのだが。
結局7日間、移動日を除くと5日間のうちに3回ここに来たことになる。
ただこの日も最高の体調ではなかったので、ライスもダル・カレーもお代わり出来なかった。分量的にお代わりするぐらいが丁度いいのに。それだけが心残りである。
一旦家に戻り、間中病院の面会が可能になる14時を待って、3人で母の見舞いに向かった。面会時間はそもそも15分しか許されていない。
姪の正枝と、その兄、甥の将之は、小さい頃、よくウチの母ちゃんに面倒を見てもらっている。丁度僕が東京で働いていた10年間がその時期に当たる。結局僕は子供を作らなかったので、母にとって孫は彼等2人だけだ。僕がいない中町の家は2人とってお婆ちゃんの家でもあった訳だ。
僕等を見ても、見た目、母ちゃんの表情は変わらない。認知が進むと表情もあまり表現出来なくなると聞いたことがある。パッと見では心情は測れない。
でも正枝が来たことは確実に分かっている様だ。彼女の手を握らせると、その手をグッと自分の方に力を込めて引き寄せて離さない。
その顔を見つめている。
後に姉とも話したのだが、その日の出来事もどんどんどんどん忘れてしまうのかも知れないけど、出来るだけ、その時、その時の、嬉しかったと思える感情を体験させてあげる。そんなことしか出来ないのかも知れない。
そのためだけに姉は今後も毎日10分でも顔を出すと言っていた。励ましの言葉をかけ続けるのだと言う。
再度家に戻って15時過ぎ。姪は大阪に帰って行った。昔からそうではあるのだが、改めて良い子に育ったなと思う。もう32歳だけど。
彼女の趣味は旦那さんと共通でバイク。夫婦で7台もマシンを所有しているモトクロス・ライダーなのだ。
さあ〜て、なんて思っていたら、太郎から「城址公園の“夜市” は行かないんです?」とメッセンジャーが届いた。忘れていたが昨晩「ぼちぼち」でそんな話を聞いたか。確か移住者さんたちが中心になってやっているフード系のイベントらしい。
面白そうだから行ってみることにした。
小田原城址公園では再生エネルギー関係の市民イベントで太陽光音響を散々やった。最も広い二の丸広場であったり、その隣の銅門広場であったり。
飲食の届出を保健所に出すのだが、営利目的を疑われるとしつこく書類の再提出を求められたり、神経質な役所の職員だと本番中にも張り付かれ、大分面倒臭い思いもしたものだ。
城のお堀まで来てみると、このイベントは、普段僕らが使わなかった、小さめの馬出門という、外から見えるお堀に面した場所でやっていた。
正直言って小田原の人間であそこでイベントをやろうと発想した者はいないのではないかと思う。
規模感といい、ウォーター・フロントの立地といい、内容といいお洒落な感じではあった。
ベトナムのフォーだったり、ジャーク・チキンだったり、あと何だ、ステーキみたいなやつか、忘れたけど。古着屋が1店舗。900円のベルギー生ビールと700円のベルギー瓶ビール。
音が小さめだが、その分、周囲の迷惑には全くならないDJブース。
いい感じとは思う。お洒落だし。フードはどこも列が出来ていたので、主催も参加者もウィンウィンだとは思う。
でも提供までに時間が掛かりがちだったかも。
ジャーク・チキン、20分待ちで、モモ肉半分にマカロニ・サラダで1000円、白飯つけて1200円か。
全般的に価格がお高めかな。
お洒落なお店って、お酒の1杯の値段が高めで量も少ないみたいな印象がある。似た雰囲気をこのイベントからも感じだ。
悪くはないが移住者が自分らのためにやってる感じはあった。それが悪い訳ではないし、楽しそうだったし、僕もこんな感じのパーティーをやっていたので人のことは言えないが、もっとお客さんファーストな部分は改善した方がいいのでは?とは思った。すいません、エラそうに。
ビール1本呑んで、まだ行ったことの無かった新しい市民ホール「三の丸ホール」でオシッコして、「三平にでも行くか」ということになった。
いやあ〜、食ってるよね〜、今回。ゆっこさんが居ないからって。食い過ぎかな〜。
多分体重が2キロは増えていると思う。姉ちゃんも気を遣ってたくさんご飯を作ってくれるし、今回は移動日を除いた実質5日間のうち、3日間は太郎と呑み歩いている。
この日もこの後、しつこくまた「ぼちぼち」にも行ったのだった。
名古屋帰ったらダイエットです。
よく晴れていた日曜日が明けて、翌月曜日の5月27日は曇り。名古屋は朝から雨が降っているらしい。
発生した台風1号の影響が日本にも及んできそうで、火曜日には大雨になるとのことだ。帰路は各駅停車の旅と、とも考えたのだがサッサと帰ろう。
やっぱ新幹線で帰ることにした。
帰りも読書の時間を取りたかったから、こだま号で帰った。前から気になっていたフェイク・ドキュメンリー・タッチのホラー小説「近畿地方のある場所について」という本を読み耽っていると、あっと言う間に名古屋に着いていた。
やっぱりまだ自由に気楽に遊び回ろうという気分にはなれないな。
裁判的なもののこともあるし、母ちゃんの容体のこともあるし。
戻ったら本当は奈良の国立博物館でやってる「空海〜密教のルーツと曼荼羅の世界」っていうのに行って「空海お薬手帳カバー」を買いたいのだが、6月7日で終わっちゃうから多分無理だな。メルカリで探すか。
まあまだこれからだ。
大阪に「スパイス・カレー食い倒れの旅」にも行きたいし、四万十川に「海洋堂カッパ館見学の旅」とか、もちろん島根に「境港、水木しげる聖地巡礼の旅」にも行きたい。
果たしてこのブログでそうした旅をレポートすることは実現するのだろうか?
想像はタダだし、発想なくして実現はない。
旅は続くのだ。