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ダイナー/平山夢明

2009年に単行本として刊行され、2011年に第13回大藪春彦賞、第28回日本冒険小説協会大賞をダブル受賞した、ホラー作家平山夢明のバイオレンス&グルメな小説。

残虐極まりない殺人や拷問、悪辣な犯罪、至上のグルメなど、豊富な知識を総動員して、読者に強度の緊張感やストレスを強いながらも、一気に読ませ、最後にはある種の爽快感すら覚えさせる、前代未聞のエンタテインメント大作だ。

やる気の無い人生をダラダラ送っていた主人公のオオバカナコは、海外旅行の資金を一攫千金で稼ぐために、軽い気持ちで「簡単な運転手の仕事」だと言う闇バイトに加担する。

雇い主はクレイジーなカップル。

彼らの目論見はあっさり失敗し、逃走車両の運転手だったカナコも捕えられ、カウボーイと名乗ったその男は

リンチの末、惨殺。ディーディーと名乗った女は全ての爪を剥がされスライスしたカウボーイの心臓を食べさせられるなどの拷問の末、カナコ共々ボッコボコにされて、とある山中で生き埋めにされる穴を自分で掘らされている真っ最中、というところから物語は始まる。

このオープニングだけで、僕はこの本を読むのを2ヶ月ストップしてしまった。あまりにも痛いし、キモいからだ。

平山夢明と言う作家は名前だけはかなり前から知っていた。

でもその作品を読む前に、平山氏がとんでもないキャラクターの人物だということを、僕の好きな実録心霊スポット突撃動画「新耳袋殴り込み」シリーズで見て知っていた。

「富士の樹海に行ってそこにある藁人形を取って来て、最恐の心霊スポットに持って行け」など、ギンティ小林たち「新耳Gメン」に、無茶苦茶なミッションを嬉しそうに提案することから「プロの狂人」と呼ばれていた人物だ。その話し振りはとても作家とは思えず、「この人は面白えな」とは思っていたのだ。

それが昨年の夏頃からYou Tubeチャンネルで「平山夢明のシネマ de シネマ」という映画解説の番組を、元々映画ライターであるギンティ小林共に開始した。それに気づいた僕はチャンネル登録者数がまだ数人だった第1回配信から欠かさず見ている(ちなみにまだ6600人)。その脱線しまくるトークと映画への造形の深さで、結構面白いのだ。

いつしか毎週このチャンネルが更新されるのを楽しみにする様になり、「じゃあいよいよ平山夢明読んでみるか!」と思って手にしたのが本著「ダイナー」だったのだが、、、。

あとは最後にスコップで頭を潰されて埋められる寸前だったカナコは、間一髪で買い手が付いて、窮地に一生を得る。

その売られた先が、元殺し屋ボンベロが営む殺し屋専用のダイナー「キャンティーン」だった。彼女はそこでウェイトレスとして働くことを強制される。

いつ殺されるかも知れない極限の緊張感の中、訪れる途方も無く強烈なキャラクターの殺し屋たちの接客しながら成長(?)していくカナコ、徐々に変化していくボンベロの心情などを描いて物語は進行していく。

殺し屋たちの独特な殺しの手法や、残虐な性格、その悲惨な生い立ちなど、鳥肌ものの描写が続き、読みながら眉間に皺が寄るのだが、料理の描写となると、こっちは実に旨そうなのだ。読後に思ったのだが、この暴力描写もグルメ描写も無理なく一気に読ませる作者のテクニックは見事だと思う。

キャンティーンのスペシャリテは「究極の6枚」と名付けられたハンバーガー。その6枚のパティは全て肉の種類や部位が計算され尽くされていて、かぶり付いた時に迸る肉汁に誰もが虜になり、バンズに顔を埋めることになるのだ。この他、デザートの蜂蜜のスフレや高級な酒の描写なども秀逸だ。きっと的確な知識に基づいているだろうと納得してしまう。

物語の最終盤は、キャンティーンを舞台に、壮絶な銃撃戦となる。ちょっとした軍隊と戦ってるレベルのバトルだ。

ボンベロと愛犬のブルドッグ菊千代、そして死にかけの潜入捜査官キューの、3人と1匹だけでそれに対抗するカナコたちなのだが、バトルの最中、足手纏いになるカナコにボンベロが命じたことは「お前の最高の料理を作ること」だった。

そしてそのバトルの末の結末と、カナコの行末とは、、、。

読み始めたら久々に4時間ぐらいのイッキ読みをしてしまった。面白かった。

で、このレビューを書くためにちょっと調べてみたら、本作は、ラジオ・ドラマ化され、漫画化されて、更に更に2018年からはweb astaというポプラ社の小説サイトで「ダイナー2」が連載されており(だが2019年6月で中断している)、尚且つ2019年には蜷川実花監督で、結構豪華なキャストで映画化もされていた。

ヘェ〜。

やるじゃん。平山先生。3個上で川崎市出身だっていうのも勝手に親近感が湧いてしまった。まずは次にブックオフ行ったら平山作品買いまくろう。

そんな風に思った次第です。

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感想(11件)

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