コブラ会
Netflixで配信中のツッコミどころ満載の青春空手ドラマ「コブラ会」の全6シーズン65話を、日数にして4日間ぐらいでイッキ見してしまった。
ツッコミどころ満載とか言いつつも4日で見たんだから「夢中で見たんだろ!」と言われても文句は言えない。その通りだ。
1984年のアメリカ映画「ベスト・キッド」(原題 [Moment Of Truth / Karate Kid] )の34年後を描いた公式の続編ドラマなのだが、僕がこのドラマの存在を知ったのは2022年の夏の事。その時点でお話はもう既にシーズン5の配信が始まるという頃だった。
その夏は、僕としては小田原を去る前の最後の夏という位置付けで、ケイシロウの店「ハヤカワ39」の運営にテコ入れしていた時期で、ほぼ毎日店にいた。
そこでソーラー音響のイベントをやってる時か何かで、何か知らんがネトフリの話をしていて、多分僕はその時ハマっていた「ストレンジャー・シングス」が面白いと力説してたと思うのだが、茅ヶ崎在住のセレクター、元King Weapon東京チームのババ・サンダー氏から「コブラ会も面白いよ」と教えてもらったのだった。「ベスト・キッド」の続編であの時負けた方の奴が主人公だと言う。
確かに面白そうだと思い、ネトフリのマイリストには加えたのだが、既に4シーズンも配信されてて、観るのが大変そうで、すぐに見る気になれず、2年半も放置していた。だが、つい最近、それが完結するという情報を得て、時間はいくらでもあるので、「じゃあ」と言うことで見てみたのだ。
そうしたらゲキハマりのイッキ見だ。2年半も放置してババくんごめん。でも見たよ。


「コブラ会」は、2018年にソニー・ピクチャーズの制作で、最初はYou Tubeプレミアムからシーズン1 & 2が配信されていたWEBドラマ・シリーズだ。
その後、2021年1月配信開始のシーズン3からNetflixに移動し、2021年12月にシーズン4、2022年9月にシーズン5が各シーズン10話構成で配信され、そしてシーズン6のみ5話づつの3部構成で2024年7月、11月、そして今回2025年2月13日から最終の5話が配信されたばかりだ。
各話30分程度の短いエピソードが連続し、イッキ見しやすい構成だった様に思う。1シーズンに見るのに5時間ぐらい。1日に2シーズンづつぐらい見ようと思えば見れてしまう。
しかも今回僕はこれを全話日本語吹替で見たのだ。
基本吹替は英語の勉強にならないし、場面の空気感とアフレコの声の質に違和感を感じることが多くて好きではないのだが、このドラマは吹替でいいだろ。非常に見やすかった。
で、お話の内容は、、、、。
34年前の空手大会でダニエル・ラルーソに負けた元いじめっ子のジョニー・ローレンスは、酒浸りの冴えない人生を送っている。
一方の勝者ダニエルは高級車のディーラーとして「ラルーソ・オート」を経営して成功を収めていた。
そんな折、ジョニーは同じアパートに越してきたエクアドル系移民の高校生ミゲルが、同級生にいじめられているところに出会し、成り行きでいじめっ子達を撃退してしまう。ミゲルから空手を教えて欲しいと請われ一度は固辞するジョニー。だが徐々に空手に対すつ情熱が蘇ってきて、自身のルーツである「コブラ会」の再興を目指すのだが、、、。
ジョニー(ウィリアム・ザブカ)、ダニエル(ラルフ・マッツィオ)ら、3作制作されたかつての映画版のキャストが勢揃いで、彼等の物語なのだが、彼等の子供世代の高校生たちの青春ストーリーの群像劇でもある。
物語は2018年夏から2020年夏までの3年間ぐらいの期間のお話なのだが、完結までに7年もの制作期間がかかったため、高校生や子役のキャストは最終的に大分成長してしまっている。

80年代は正に僕の青春時代だと言える。僕の学生生活は、77年から79年が中学時代、80年から82年が高校時代、83年から86年が大学時代、と言った感じである。
このドラマの原点である映画「ベスト・キッド」の1作目が公開された1984年は僕は20歳。多分レンタル・ビデオでそれを見たと思う。
一般家庭にVHSのビデオ・デッキが本格的に普及し始めたのは僕が高3だった82年頃からだったと思う。同時にレンタル・ビデオというカルチャーが勃興、映画が家庭のテレビで見れる時代に突入したのだ。
得てしてこういうものはエロがハード・ウェアの普及を牽引するものだ。アダルト・ビデオが世の中に蔓延し始めたのはこの頃からだ。
僕も高校を卒業して最初のバイトの給料で、ビデオ・デッキとテレビが一体型の「テレビデオ」なるマシンをすぐに買った覚えがある。それはもちろん見たい映画もたくさんあったが、人生の中で、最もエロに興味津々のお年頃であったことは否めない。
時はリアル・タイムで「ナイスですね〜」だったのである。
よく80年代の音楽が良かったみたいに言われるが、僕が高校生の時は「ベスト・ヒットUSA」とかが全盛期だった。「コブラ会」のBGMでも当時の曲が良くかかる。特にBon JoviやJourney、Sueviverなどのアメリカン・ハード・ロック。正直言って嫌いだった。
当時僕はUKのパンク/ニュー・ウェイブ/ポスト・パンク、そして日本のパンク・ロックとかが好きだったのだ。
「ベスト・ヒットUSA」の時代は、ロックがレベル・ミュージックとしての牙を抜かれ、ビッグ・ビジネスとして資本に飼い慣らされた時代だ。音楽評論家伊藤政則はこれを「産業ロック」と呼んでいた。
それでも80年代の特殊メイクを凝らしたSFホラー映画は良かった。CGでは出せない魅力に溢れている。
リドリー・スコット「エイリアン」「ブレードランナー」、ジョン・カーペンター「遊星からの物体X」、ディヴィッド・クローネンバーグ「スキャナー」、「ザ・フライ」などなど。前述のNetflixの大人気シリーズ「ストレンジャー・シングス」も舞台は1980年代。このシリーズ全体が丸ごと80年代SFホラーのオマージュでもあるのだ。
話は大幅にそれたが「コブラ会」は、原点の映画「ベスト・キッド」の世界観を多く引き継いでいる。いかにも白人が考えそうなステレオ・タイプの日本/アジアのイメージだ。バカにしてんのか!もうちょっと真剣に調べろよ、と言いたくなる様な、テキトーな感じの世界観だ。
これらの設定は21世紀の現代になっても全く改善されていない。
そりゃそうだ。このいい加減な世界観無くしてこのドラマは成立しない。それが笑えるポイントだとも言える。それを笑って楽しんで観るのがこのドラマに対する正解だとは思う。
例えば、、、。
お辞儀が変。あんなお辞儀は逆に失礼だ。なのにワルい奴でもその変なお辞儀だけは律儀に必ずする。
空手の試合のルールが危険でいい加減。それに都合良くコロコロ変わる。
素手であんなに顔面殴ってたら一瞬にして血まみれだよ。子供にやらせることじゃない。MMAより危険だ。投げもOKだったり、危険な反則の打撃が実際入ってしまっても注意のみ。次から減点とか言う。普通、即、反則負けだって。
沖縄が舞台のシーンになっても沖縄でロケしない。バルセロナにはロケしに行くくせに。なんか岩山みたいなところを沖縄だと言う。沖縄民謡三線じゃないし。沖縄とでんでん太鼓関係無いし。
でもなんか知らんが、沖縄の乾杯の時の言葉「カリー」だけは知ってて、劇中「カリー」を使うことによって沖縄出身がバレて潜入捜査がダメになるなんてシーンもあった。「えー!そこ!?そこは使うんだ!」って感じだ。
日本人の名前でトグチ・チョーゼンって何だよ!誰だよ!リーかよ!!

変なところだけ日本語に拘ってて、いろんなところで日本語をそのまま採用。世界大会の呼び名はそのまま「SEKAI TAIKAI」だし。でもそのセカイタイカイに、韓国代表は出て来ても、日本代表出て来ないし。

脚本はまあイライラ、ジリジリ、ストレスフルな展開の連続。
勘違い。すれ違い。誤解。登場人物全員でそういうことを何回でも繰り返し、視聴者の心理を弄び、次の展開に繋げて行く。
「え、何でそんな風に捉えるの?何でそこで信じてあげないの?」みたいな。そのイライラのせいででドンドン観ちゃうのだ。
主人公ジョニー・ローレンスは典型的なトランプ支持者みたいな、ダメ白人を絵に描いた様な人物。
常にクアーズを飲んでいて、飲みながら運転もする。好きな食べ物はザッツ・アメリカンなジャンク・フード。何でもぶっ飛ばして解決するガサツで破壊的な性格。80年代のアクション映画とハードロックが大好き。
でも愛されキャラとして描かれていて、極端に言ってみれば、白人にとっては「寅さん」的な存在なのだろうか?アメリカ社会には一定数、あのキャラクターを愛する層はいるのだろう。
そんなジョニーが、南米移民、アジア系、黒人系、欧州ルーツ系、更にはデブ、チビ、ルッキズム的に難ありな顔面、オタク、ギャルどといった、多様性溢れる登場人物たちと共に、成長しながら再生していく物語である。
てな感じで文句ばっか言っちゃってるけど、6シーズン全65話を4日でイッキ見しといて、我ながら何言っちゃってんの、って感じでだ。
大好きなクセに。
ハイハイ、そうかも知れません。そうかも知れませんが、84年の映画版「ベスト・キッド」を観ようとは思わないかな。一応今アマプラで確認したら映画版の1、2、3とも400円でレンタル可能でした。
でも、もし、これからこの「コブラ会」を通して観ようなんていう人が居たなら、映画版の1、2、3、観てからでもいいかも。繋がってるんで。話が。
そして、僕は映画は見ないつもりだけど、T-シャツは着てるかも知れない。

そんな感じでした。
「コブラ会は不滅なり!」