水木しげるの百鬼夜行展に行って来た。
名古屋市博物館で開催されている「水木しげるの妖怪 百鬼夜行展〜お化けたちはこうして生まれた〜」に行って来たのだ。
https://www.museum.city.nagoya.jp
名古屋に来て便利なところは、政令都市だけあって都会の恩恵をすぐに受けられる点だ。
この水木しげるの展覧会だって、小田原在住だったらわざわざ六本木ヒルズまで出向かなければならなかったやつだ。横浜だってスキップされてる。
さすが中部エリア最大の経済的/文化的拠点。地下鉄移動15分程度で行けるのは非常にいい(ただ、東京での開催は1年前ではあったのだが)。
昨夜はあまり眠れなかった。注射を打った後が痛むのだ。
4週間に一度のゴナックスの皮下注射の後はそういう日が多いのだ。どんな体勢を取って寝ても落ち着かなく、一晩中寝返りを打ち続けることになった。まあ、勤めに出る訳でも無いので別にいいんだけどね。
なので水木行きは1日ずらそうかと思ったが、明日からは夏休みだ。ガキンチョが大挙する中での見学はちと頂けない。
調子を見極めるためにリラックス。朝食後、レコード棚を物色し、SANTANAの名盤 [CARAVANSERAI]を引っ張り出し、Yogiboに寝転ぶ。
カルロス・サンタナの悪魔的なギターに身を委ねながら束の間の深い眠りに落ちた。いわゆる「ミラクル大爆睡」だ。覚醒した時には気力は70%ぐらいまでには充填されていた。
「行こう。しげーさんが待っている。」
支度を整え、地下鉄東山線覚王山駅に向かったのであった。
道中のお供ミュージックは最近BAND CAMPを通じて購入したオランダのハーグを拠点とするSPCLNCHというレーベルから配信されたMartin Jarlというアーティストのミニ・アルバム[Bizarre Love Rectangle]。ダブ・テクノは僕がこの数年リアルタイムで聴き続けているジャンルだ。
桜通線桜山駅4番出口を出ると灼熱の太陽が降り注ぐ。
激アツだ。
日傘では無いのだが携帯していた折り畳み傘を広げる。
程なく名古屋市博物館に辿り着いた。初めて来た。それなりに歴史が感じられる外観。正面入口に広がる庭園もいい感じだ。
展覧会内は、まあ当然のことではあるが基本的には撮影禁止。しゃーない。中ではいくつかのオブジェが記念撮影用に設置されていた。
展示は、しげーさんの子供時代、徴兵されて南方に派遣された戦時中、帰国後の貧乏時代、漫画家として大成するまで、をパネルで辿るイントロダクションから始まる。
続いて、平安期から江戸期までの文学や絵画の中に妖怪を見出した年表、江戸期における鳥山石燕「画図百鬼夜行」や桃山人「繪本百物語」、明治期の柳田國男「妖怪談義」、井上圓了「妖怪学講義」などの著作本を、実際の水木先生の現物のコレクションで展示しながら、本邦における妖怪文化の変遷を時系列に説明していく。
メイン的な空間には「画図百鬼夜行」の妖怪を水木先生が描き直した作品を、元ネタと並べて展示。現代風にアップデイトされている点などが比較出来る仕掛けとなっていた。
更に多くの水木しげる作の妖怪画の展示。とにかくその超絶的な精密さに目が行く。細密画の中の違和感の如くポツンと存在する水木妖怪たち。画面の中でのその対比が素晴らしい。あれは原画なのだろうか。
途中途中で設置されたモニターで、荒俣宏氏のインタビューや、NHK ETVでかつて放映されていた
「水木しげるの妖怪絵本」などの動画、最後の大きなスクリーンではドキュメンタリーが放映されていた。見入っている方も多くいたがその辺は飛ばした。そんなのは大体知ってるからである。
全ての展示を拝見し、物販コーナーをじっくり物色した挙句、結局何も買わなかった。
最後の最後まで公式図録は迷ったが、購入しなかったのは、収録されている絵が誌面の配置上ちょっと小さかったからだ。でもやはり購入すべきだったか、と少し後悔が残っている。
名古屋市博物館を後にしたのが13時近く。昼食にしよう。
この展示会に来るために場所を地図でネット検索した際に、すでに近くのレストラン検索も済ませてあったのだ。
歩いて1分もしないところにある、麺類、和食、丼のお店「三嶋屋本店」さんに向かう。
実は正直言って僕は今までSNS投稿をあまりやって来なかった。あまり好きでは無かったのだ。そういうの。
ゼロではないが、やったとしても、基本的には自分が主催したりDJで参加、または仕事で音響で入るイベントの告知、たまにプライベートなネタもあげたが年に1回ぐらいなものだった。
何が言いたいかというと、そういうことをやり慣れていないが故に今回は食事の写真を撮ることを全く忘れていのだ。だからネットで調べて引っ張ってきた写真をここでは使わせてもらうことにする。
店内は、基本的に座敷席、4人がけのテーブル席の様で、お昼時には本来のキャパシティを大きく下回って満席状態。若干待つことになった。
名古屋に来て縁遠くなるかも知れないと思うもののひとつが蕎麦だ。
関東はうどんも食べるが蕎麦を食べることが多い。この三嶋屋さんの様なタイプの店も関東だったら蕎麦屋にカテゴライズされるタイプの店だと思う。
天麩羅やカツといった揚げ物に、丼もの、そして麺は蕎麦かうどん。それが基本だ。
それがうどんかきしめん、と言った具合となり、蕎麦も選択は出来るが割増料金となっていた。
蕎麦屋で天ざるで吞むパターンが好きな僕としてはちと残念ではあるが、ここは郷に入っては郷に従え。
冷やしとろろきしめん、温きしめん、ミニ天丼のお昼限定セットを頼むことにした。
これまであまり食べて来なかったが、きしめん、美味しいじゃないか!幅広の麺の食感が思いの外いい感じだ。
冷、温、メシ、みたいなローテーションでワシワシと食べ進めていく。ミニ天丼には結構しっかりした大きな海老天がイン。
これで税込750円也。思わず孤独のグルメの様な物言いになってしまったが、満足してお店を後にした。
灼熱の太陽を浴びながら地下鉄桜山の駅まであと数メートルというところで「お客さ〜ん!」という女性の声がかすかに聞こえた気がした。
咄嗟にトートバックのポケットに手を入れ、iPhoneの不在を感じながら振り返ると、店員さんが僕のiPhoneを手に追いかけてくれて来ていた。暑い中、本当にすいません。ありがとうございました。
事なきを得てプラットホームへと続く階段を降りたのであった。
家に着いた僕はすぐさま水のシャワーを浴び、冷房をつけた部屋で再びYogiboに横たわると引き込まれる様に眠ってしまった。
まるで小学生の様なおじさんの1日である。
就寝前に家内に入場券と記念にもらった特典の妖怪カードを見せた。砂かけ婆が描かれたそのカードを見て彼女は「お主そっくりだな」と言い放った。むむむむ。こここここ、こやつは、、、、。全く、、、。
まあ、実際、僕は今、白髪のロン毛なのであるのだが。