CARAVANSAREI / SANTANA
- Eternal Caravan Of Reincarnation
- Waves Within
- Look Up (To See What’s Coming Down
- Just In Time To See The Sun
- Songs Of Wind
- All The Love Of Universe
- Future Primitive
- Stone Flower
- La Fuente Del Ritomo
- Every Step Of The Way
1972年にリリースされた、メキシコ系アメリカ人のスーパー・ギタリスト、カルロス・サンタナのその名を冠したバンド「SANTANA」名義としては4枚目となる永遠の名作。
僕はこのアルバムを訳も分からずに中学生の時に買ったが、当時はまるで理解出来なかった。
ロック・シーンにおいてギター・ヒーローが絶対的な存在だった当時、ディストーションの効いたヘヴィなハード・ロックを期待して2500円もの大枚を叩いた中学生にとっては大人過ぎたし難解過ぎたのだ。
しかもほとんどインストのアルバムだ。
あの頃、最後までこのアルバムを通して聴いた事があっただろうか。常に途中で諦めていた様な気がする。
勿論大学生になった頃にはちゃんと聴いたのだが。
ジャケット・アートからも連想される様に、砂漠の夜に鳴くコオロギの声からアルバムは始まる。
呪術的なサックスのフレーズがループし、そして魔王の登場を先導するパーカッションに続いて戦慄のギターが鳴り響く。
ロック的というよりソウルフルでエモーショナルなお洒落なコード感だ。なのだが、曲のアレンジが情熱的でパーカッシヴ。
そんな音場の中でギターは鳴き続ける。
熱い興奮に包まれたまま聴き進み、半ば現実世界に放り出されたかの様にやや唐突にアルバムは終わる。
しばらくはボーッとしてしまう。
全体的に非常にコンセプチュアルで、ラクダで旅するキャラバン隊の商人たちが見た砂漠の夜の幻想を思わせる。
曲間はほとんどなく、ノン・ストップで物語は紡がれていく。
そんな世界観を自らのアイデンティティであるラテン・ミュージックで表現しているのである。
Wikipediaでサクサクっと同時代のバンドやミュージシャンを探ってみた。
ビートルズは70年に既に解散し、ジミヘンも70年に他界。ストーンズは72年の12枚目となるアルバム [Exile On Main St.] や、翌73年の [Goats Head Soup] でブルース色、アコースティック色を強めて行った頃。
ギター・ヒーロー系で言うなら、ジミー・ペイジのレッド・ツェッペリンにおいては5枚目の [House Of Holy] でクラシカルでゴシックな世界観を、ジェフ・ベックで言うならまだ第2期ジェフ・ベック・グループの頃で、後にフュージョン色を強めて打ち出した [Wired] のリリースはまだ先の76年。
リッチー・ブラックモアのディープ・パープルにおいては [Machine Head] と、まだまだバリバリのハード・ロックだ。クィーンに至ってはそのデビューは74年である。
ブラック・ミュージックで言うなら、後にフュージョンと呼ばれる様な音楽の代表格的なグループ、ザ・クルセイダーズが前身のジャズ・クルセーダーズからザ・クルセイダーズになったのが70年。
71年にアース、ウィンド&ファイヤーがデビュー。
ブラック・ロックの流れから進化した側面も持つPファンクにおいては、70年にパーラメント、ファンカデリック両グループともデビューを果たし、71年にはファンカデリックの名作[Magot Brain]が発表されている。
サンタナはどちらかというこういったミュージシャンたちと呼応していたのではないかという気もする。
更に言えば、当時はロック・シーンでは取り沙汰されていなかったかも知れないが、NYのラテンの名門レーベルFANIAが伝説のドキュメンタリー映画 [Our Latin Thing] を公開した年が72年であった。
既にサルサやブーガルーといったラテン・ミュージックは絶頂期にあった訳だ。
フュージョンとかクロスオーバーと呼ばれるジャンルが一般的になる70年代中頃を前にして、72年のカルロス・サンタナの[Caravanserai]は、ラテン・ジャズをベースとした完璧なフュージョン作品だと思う。
他の多くのロック・バンドがその芸術性を高めるためにクラッシックやバロック音楽を取り入れていったのに対し、彼は音楽的にもスピリチュアルの部分においても自らのアイデンティティを貫いていた。
やはり白人主体のマーケットと言わざるを得ない当時のロック・シーンにおいて、有色人種であるサンタナは独自の道を探らざるを得なかったのかも知れないが、その音楽は今も輝きを放っている。
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