日々モロ

映画「君たちはどう生きるか」を観てきた。

日にちは前後するが、「橋の下大盆踊り」に参加する2日前、宮崎駿監督作品「君たちはどう生きるか」を観てきた。劇場初ジブリだ。

プロモーションを基本全くやらないということで公開されたこの作品。僕も内容について全く何も知らなかったし、当初、絶対見に行くと決めていた訳でもなかった。

だが、公開1ヶ月を過ぎてから少しづつ情報が出始めた。そんな時、とあるネット・ニュースを見ていたら、制作に協力したプロダクションが発表されていた。

そこに参加していたのは、エヴァンゲリオン・シリーズの「スタジオ・カラー」、攻殻機動隊シリーズの「プロダクションIG」、鬼滅の刃の「UFOTABLE」といった、超一流の制作会社ばかり。かつて宮崎駿の薫陶を受けた弟子筋というのか、そうした人たちのジブリに対するリスペクトの想いというのか、何となくそういったものに感じ入るところがあって、観に行くならもうこれ以上情報を入れないうちに行かねば、と思いたったのだった。

ジブリ作品、というかアニメに関する僕の想いはかなりの変遷を遂げている。

「風の谷のナウシカ」が公開された1984年は、僕が20歳の頃。大学生だった当時の僕はアニメを見る様な同年代を変態だと思っていた。

だが、そういう感情も、もしかしたら僕の深層心理において「オタクと思われる訳にはいかない」と言った自己防衛的な意味合いも含んでいたのかも知れない。

今でこそ「オタク」は、世の中の価値観が多様化する中で「何何オタク」といった様に細分化し、「あるジャンルに特化した専門知識を持つ人」的な捉えられ方をされているのではないかと思う。そう捉えられる様になったのには、女性のオッサン化、女性のオタク出現も大きな要因だろうと考える。

だが当時の「オタク」は「いい大人なのにアニメや特撮などばかり見ている何かアブないヤツ」という一択だったと言っても過言ではない。

それまでは「大人が見るアニメ」というジャンルも確立されてなかったとも思う。だから「いい大人なのに」なのだ。「いい大人なのに、いつまでも子供の頃のことに浸っている」ということが問題視されたのかも知れない。そして今にして思えばジブリ作品は一般的な大人も観れる長編アニメの先駆けとなったのだろう。

当然、僕も子供頃はそういった特撮やアニメといったものに夢中ではあった。ではあったが中学、高校、そして大学生となった頃にはそういったものが好きだとは公言しなくなっていた。音楽の方が好きだったし、お酒を呑んで、女の子と遊ぶ方が全然良かったのだ。

だからそういったオタク文化が一般的な支持を受けるものになると思ってなかった。「ナウシカ」も壮大なオタクの好きそうな美少女SFの話ぐらいにしか思ってなかったのだ。大体ナウシカ、ノーパンじゃないか。何回も尻見えてるし。あれはオタクの変態向けのサービスだろ。

だが、僕の考えの盲点は、子供たちが観に行くだろうことに思いが至ってなかったことだ。

僕と奥さんは12歳離れているのだが、ナウシカが公開された84年、僕が20歳なら彼女は8歳だ。彼女が初めて観に行った映画はナウシカだと言う。当時のオタクたちだけでなく子供たちの支持も取り付けて、ジブリは軌道に乗ったのだろう。尻も出さなくなったし。

その後、実際僕は30代後半ぐらいまで、アニメというものをほとんど見てこなかった。仕事も忙しかったというのもある。昼夜関係なく仕事をしていた。音楽の世界、しかもレゲエやヒップホップといった偏ったジャンルにだけにどっぷり浸かっていたので、当時のJ-POPSのことすら知らないぐらいである。

40歳で会社を辞め、自称フリーランスになってからは時間的には余裕が出来た。それなりにジブリも テレビでもDVDとかでも見た。

しかし大きな転機は、テレビ東京の攻めてる深夜ドラマ枠「ドラマ24」で2016年に放送された「アオイホノオ」を観てからだ。

子役出身で伸び悩んでいた柳楽優弥が大きく化けた作品でもあるこのドラマは、コメディに定評のある福田雄一が監督し、「逆境ナイン」の様なクセの強い作品を描く漫画家島本和彦の大学生時代を描いた同名漫画を映像化したものだ。大阪芸術大学時代、島本の同級生に、庵野秀明を始めとした、のちにガイナックスという制作会社を作って「新世紀エヴァンゲリオン」を世に出した連中がいた、という話だった。まあその後、紆余曲折あって、庵野とガイナックスは袂を分つ訳ではあるのだが、そのせいかこのドラマは、すごく面白いのに若干封印されている感がある気もする。サブスクでは配信されてないし。

庵野秀明役を安田顕が演じ、その怪演ぶりが相当に良かった。僕はまず庵野秀明という4歳年上のオタクの王様に興味が湧いた。そしてリリース済みだったエヴァ絡みの作品群を(その時点で新劇場版「Q」までが公開済みだったのだが)、長年のエヴァのファンが20年ぐらいかけて待ったものを、一気見したのであった。

前振りがだいぶ長くなってしまった。

とにかく現代ではあの忌み嫌われたオタクという存在はもういない。サブカルの裾野は大きく広がり、かつてのオタクに近い様なヤバさを持った連中はネットの闇に潜んでいるが、社会現象として表面化してくることはない。

庵野さんの様な異常なオタクも、命懸けで突き詰めて、究極に至れば、偉人であり天才である。

そして現在の僕は、動画のサブスクリプションで、有名なアニメ作品はほとんど見ているといった状態なのであった。

という訳で映画「君たちはどう生きるか」を見てきたという話だった。

同名の吉野源三郎著の児童小説は直接は関係ない。作品中に主人公の母が残してくれた本として出てくるだけだ。

主人公は牧眞人という11歳の少年。時は第2次世界大戦真っ只中。療養中の母を病院の火事で失うところから物語は始まる。軍事工場を経営する父は、その母の実の妹の夏子を後妻に迎え、彼女の実家である田舎の大きな屋敷に真人は疎開する。その敷地内にある不思議な塔の様な洋館の中で、眞人が体験する不思議な冒険。話は大体そんな感じだ。

数々のジブリらしい魅力的な表現のシーン、愛すべき多くのキャラクター、超豪華な声の出演陣、また宮崎駿10年振りの長編劇場作品などといった事実を踏まえ、普通に通り一辺倒のプロモーションをしていたら大ヒット間違いなしの作品だと思う。

なぜ今回ジブリはこの様な公開のプロセスを取ったのだろう。

ひとつ感じたのは、穿った見方かも知れないが、もう日テレと組むのが嫌だったのかな、と思った。

毎年何回も何回もあたかも日テレの持ち物かの様に放送され、消耗していくジブリ作品。子供たちのため、という必要性はあるかも知れないが、10年振りに作る新作においては、それはもう嫌だったのか。

庵野秀明はいつだったかエヴァのことを「ウチのは自主制作映画ですから」と言っていた。

ガイナックスとの大きなトラブルを経て、現在のスタジオ・カラーは、制作の現場から、版権管理、プロモーション、ノヴェルティの制作/販売、全てにおいて、自ら管理する体制を敷いている。

10年振りに復帰するに当たって宮崎監督も自由にやりたかったのだろうか、と思った。

「君たちはどう生きるか」は、分かり易い少女や少年の成長譚ではないし、ストレートな教訓や、メッセージ性が強い訳ではない。無い訳ではないが、これまでに作品の様に明確ではない。ブツっと終わってしまう感じで、見終わった直後に大きな感動がこみあげるという感じでもない。少しグロい描写もあった。

こういったことは、出資者や代理店などの多くの関係者が集まった製作委員会制やフィルム・パートナーズなどと言ったシステムの中では簡単ではないだろう。当然、脚本のチェックも入るだろうし、表現にもいろいろ指摘されることだろう。

もうそういうのが宮崎駿は嫌だったんじゃないか。宮崎駿だけじゃなく、プロデューサーの鈴木敏夫も嫌だったんじゃないか。スタジオ・ジブリという大看板の下で国内最高峰の映像作家がかましたわがまま。あるいは実験。

単なる僕が思ったことだ。真実かどうかは知らない。

ただ「君たちはどう生きるか」はこれからジワジワと世の中に浸み出してくる作品だと思う。

そして観終わってひとまず思ったのは、吉野源三郎著の「僕たちはどう生きるか」を読んでみようということだ。まさか宮崎監督の意図が、わざわざこの映画を観せてまでして「僕たちはどう生きるか」を読ませることだったのか?それに乗るのも単純過ぎるが、敢えてその手に乗ってみようと思った。

109シネマズに行った帰りはいつも笹島から歩いて栄付近まで行く。

この日は「スパゲッティハウス・ヨコイ住吉本店」でミラカンを食べて帰ったのであった。

科学館の側まで行ってみた。チビっこが沢山いたのでオジサンはまたの機会に行くとしよう。
ミラカンは初めて食べた。いつもピカタを食べてしまうのだ。

アオイホノオ Blu-ray BOX 【Blu-ray】 [ 柳楽優弥 ]

価格:16,720円
(2023/8/28 18:18時点)
感想(1件)

全巻セット【中古】DVD▼アオイホノオ(4枚セット)第1話〜最終話▽レンタル落ち

価格:3,391円
(2023/8/28 18:19時点)
感想(0件)

【中古】アオイホノオ <1−28巻セット> / 島本和彦(コミックセット)

価格:10,923円
(2023/8/28 18:22時点)
感想(0件)

追記:2023年9月23日

ニュースで、スタジオ・ジブリが日本テレビの子会社化されるというのを見た。いろいろそれぞれ事情がある様だが、宮崎駿氏、鈴木氏敏夫氏の老齢化が主な理由らしい。

最初にこの記事をアップした後に、映画監督新海誠氏の本作に関する感想的な記事を読んだ。

新海氏のキャリアの最初期の劇場作品「言の葉の庭」の公開時に、ジブリは作品上映後に自社作品の4分にも渡る予告編を流すという暴挙をしてたらしいという事実を知った。新海氏は言葉を丁寧に選んで、作品に関しては正当な評価を与え、しかしながら今回の広告戦略に対して違和感や危機感を感じていた様だった。

何だかなあ。終わったんかな。

Please follow and like us:

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です